城内:それじゃ、はじめにCO2の発端の経緯を簡単に教えてもらえますか?
富岡: まぁ去年、ドイツのNIPPON CONNECTIONであるとかハンブルグ映画祭だとかチョンジュとかプチョンとか世界の映画祭をいくつか回りまして。それは今まで、大阪芸術大学が中心だけども、関西で作られた自主映画をその映画祭に紹介していたから。
まぁまたシネトライブの作品も定期的に海外の映画祭で上映枠をもらえるようになってきてたわけですわ。
それはある意味、日本の自主映画が海外からおもしろいと認められてきているといたということだよね。そのへんの話を今回の総合プロデューサーをやってるパトリアの康さんとかと「こういう状況ですよ」というふうに話をしてて。ちょうどパトリアとは「シネアストの眼」というシリーズで30分のドキュメンタリーの制作をうちが請け負ってやってた。で、そうこうしてたら康さんが大阪市からこういう話があってっていわれて。
城内:それは映画祭をやってくれっていう話ですか?
富岡:そうやね。まぁそのへんの市側とのやりとりの経緯はちょっとよくわからないけども、とりあえず映画祭をやってくれと。
城内:最初から自主映画の映画祭ってことだったんですか?
富岡:いや、そういう話ではなかったね。それで康さんは康さんでこないだのパンフレットにも書いてあったけど(※CO2当日のパンフ)シネアスト・ヴィレッジっていう構想があって。それはいまのところノウハウはないけどもいま、僕が考えているところとある程度一致するところもあったので。で、やってくれへんかということで、じゃやりましょうと。
ただ僕としては映画祭はもういい、映画祭をやる意味なんかもうないと。もうすでに水戸短編映画祭とか調布とか、関西では宝塚映画祭とか自主制作映画を募集して、その中から1本2本選んで賞を与えるというのは各地でやられてるからね。だからそういうのはもういいと。まぁ最終的には映画祭という形をとってくれという大阪市側の要請もあって、それはやるけども。そういう意味では映画祭という名前はつけなかったわけよね、映画上映展、エキシビジョンっていう変な言い方になったけども。
それよりは作っていく過程を大事にしようと。それでまず自主映画製作を助成しよう、助成金を与えて撮らせるということをするシステムをつくろうと。それは康さんのシネアスト・ヴィレッジともリンクするし。まぁスタジオというものはないけども、インターンという形でスタッフ登録していたら撮影に参加できて、各部署があってっていうヴァーチャルな意味でのスタジオというかたちをとれないかなと。それは東京からプロが大阪に撮影に来るときにもそのシステムがつかえるような役者さんも含めたスタッフが交流する場所を作りたいと思ったのね。またそこでほかのスタッフと知り合ったことでほかの作品が生まれてくるとか。その場所を作りたいと思ったのが一番やね。
|
城内:それが発端ということですね。最初の企画ですごくおもしろいなーって思って今回制作にも参加させてもらったんですけど。僕もエンカウンターもやってって、その前には京都国際学生映画祭もやってって、自分たちで映画を製作しててという立場からみたら。これは各作家の気質にもよるところなんでしょうけど、自主映画ってどうしても閉じた世界になりがちなので、こういった交流の場というか、刺激を受けれる場が出来るというのはいいことだなと思って。
で、今回の企画は今の日本の映画の現状を踏まえたところでの富岡さんからのアプローチとしてCO2ということだったと思うんですが、それなら富岡さんが感じる現在の日本の映画、自主映画のありかたまで含めたところでの批判というのはどういったことなんでしょうか?
富岡:ここ5年ぐらいかな、いやミニシアターが出来てからのブームでいうと15年ぐらいになるけども。ミニシアターっていうのは最初は独立した小さな劇場はたくさんあったんだけども、かつて東映とか東宝とか大手チェーンがあったに対してのミニシアターのだったのに、ミニシアターがうまく回るようになってくるとこんどは大手が参入してきてガーデンやリーブルみたいにミニシアターのチェーンみたいになっちゃった。すると上映する作品は必要だから小さな作品でも値段が上がったわけよね。
一方でシネコンがどんどんできてきて、大きい映画はガンガンやると。東京ではもっと小さな劇場がたくさんあって低予算の日本映画っていっぱいかかってる。
これはどういうことかというと大きな映画と小さい映画はあるんだけども真ん中がなくなっちゃったって事じゃないかと思う。
また自主制作映画も作品の水準というとこれはいろいろ議論はあるだろうと思うしあれだけども、技術的な水準は確実に上がった。これは単純に機材がよくなったということだとは思うんだが、まぁテレビでやっているサスペンスもののようなものを自主制作の連中が平気で作ってくるようになった。
そこで作家性も高くって(もちろん作家性が強いだけでは商品にはならないけど)商品にもなりえるようなものをバランスをとりながら作りたいなという思いがあって。それは山下(敦弘)の作品や本田(隆一)の『東京ハレンチ天国』とか大阪芸術大学の卒業制作なんかにかかわってきて、海外の映画祭なんかに出品したりしてると、海外のほうが日本国内よりはやく注目してくれるわけよね。これはいつも言ってるんやけど、日本で低予算の映画って言ってもそこそこ有名な役者さんが出ててっていうようなものじゃないと劇場ではかけにくいっていう状況なんだけども、海外の映画祭に出れば日本の役者さんはほとんど知らないわけだから単純にいいものが評価されるわけだよ。これには非常に勇気付けられたね。
そう考えると日本だけが歪んだ状態だと思うわけよ。いまだにブロックブッキングに近い状態で、有名役者が出てないと製作資金が集まらないっていう状況になってて。じゃ有名な役者が出ててそれでペイしてんのかっていったらペイしてない。 |
|
城内:そういう状況を鑑みて、今回のCO2の企画制作部門の作品に関しては最初から「プログラム・ピクチャーだ」っていうふうにいっていたじゃないですか。こういう言い方は変かもしれないけど、映画的な芸術性の高い作品ということだけじゃなくって…。
富岡:まぁ自主映画をつくっている連中の一番悪いところは、売りというのをあまり考えない、自分たちだけが満足するものを作ろうとする。必要なのはある程度の質を保った上でそれを商品化していくというところやね。だから今回はどちらかと言えばプロデューサーベースの作り方かな。まぁその辺は微妙なわけよ。微妙やからどう説明していいかわなんないけども。今僕が見てる中での商品化できるぎりぎりのラインを目指したつもり。
まぁこういったシステムの中でとることが出来ない自主映画の監督もいるとは思うけど、今回の場合は2月14・15日に上映するのが決まってたから、そこまでに完成するということが条件になったわけだし、当然これは職業として映画をつくるんなら必要なことだしね。それをクリアーできるかどうかということも選考の基準ではあったわけ。もちろんそうじゃないやり方、1、2年週末だけ利用してっていう撮り方のほうがいいっていう監督もいるだろうし。
だから普通助成金と言えば「はい、お金あげました、好きなように作ってね」ってことだと思うけど今回の場合で言えば、そういうことにはしなかったよね。変な言い方やけど紐付きの助成金にしちゃったって感じ。それは指導しますと、こういうやり方でこういう映画を作りなさいとキャスティングもスタッフィングも含めて5作品に口出したよね。それは作家にとってプラスだったのかどうかはわからないけど、各監督と話してこういう形でいこうね、という同意は得られたと思ってる。
城内:じゃそういう経路をとって出来上がった作品に関して、その出来具合としては100点満点ではないにしろ満足はしてますか?
富岡:それは満足してるね。それぞれが今まで撮ってきたものとは違ったものになってるから。実際こんなたくさんのスタッフでやったのは初めてっていう監督がほとんどだったし、役者さんに外部から来てもらうっていうことも。また役者さんの側にもメリットはあると思うしね。自主制作映画でも主役を張るっていうのはぜんぜん違うと思うよ。
城内:主演男優賞・女優賞っていうのがあったのは全然違いましたね。
富岡:よかったね。そりゃー普通からしたら「誰なの?」って話かもしれないけど日本アカデミーショーとかにくらべたら全然意味があることだと思う。あんな出来レースよりも(笑)
|
|
城内:じゃこれからは別の流れで僕と同じように制作の管理を担当した菊池さんにも入ってもらって。今回CO2の制作進行として参加して、漠然とした言い方だけどどうでした?
菊池:やっぱり初めにおもしろいとは思ったよ。プログラム・ピクチャー的な作り方もそうだし、インターン・スタッフを募集してスタッフを育成するっていうことも。あと今回監督した5人に関してもいろんなところで賞をもらったりしていたけど、それ以後っていうことはなにもないっていう感じだったのが、今回みたいな制作スタイルで監督できることっていうのは実感としてステップアップになったんじゃないかと思う。
あと自主映画って好きなことをしている反面、監督がOKといえばOKだみたいな感じもあるんだけど、そうじゃないんだと。
富岡:そういうところはあるよね。そういう意味でもプログラム・ピクチャーだってことなんだけど。監督の方向性とかも割りと強引に変えたところもあるしね。特に井村(征爾)くんの作品は別の企画で応募されてたんだけど、個別に話をしていくうえで『蹴る女』っていう話がでてきて「こっちのほうがおもしろい」ということで企画を変えてもらったりしたし、山田(雅史)くんに関しても今まで映像中心で考えてきたのを脚本をきっちりやるということをやってみようということを話したり。それがどれだけできたかは微妙なとこやし、監督にとっては煩わしい部分もあるやろうけども。ただ今まで山下らの作品にかかわってきて、「あっ、ここまでの出来ならここまではいける」っていう、まぁそれは勘でしかないけども、その感触でもうちょっとこっちにいこうっていう大枠を決めていく作業を監督とは結構時間をつかってやったよね。
城内:僕個人の感想としても今回のCO2って大まかなところでいえば成功だったと思うんですが、逆に問題だったところもいっぱいあって。それに関して特にCO2の枠を超えてでもいいんですがなにかありますか?
菊池:やっぱりプログラム・ピクチャー的な作りかたをするんであれば、ある程度きまったシステムがあってそれを利用してやるべきなんだろうけど、今回はスタッフの育成っていうことも目的としてあったから、それもバランスってやっぱり難しいというか不可能に近い。インターン・スタッフの子達は本当によくがんばってくれたけど、やっぱり素人さんがほとんどだし。そうなってくると自主映画を一緒にやっている友達とかに声をかけてスタッフになってもらったりって感じだった。
富岡:それはみんながみんな映画の世界に入っていくわけではないからな。そのバランスはもっと積極的にとっていくようにしないと。あと資金面は助成金にあと0がひとつ増えるぐらいじゃないと援助とはいえない。
菊池:機材もカメラだけあってもどうにもならなかった。
富岡:それはそうだし、それと同じで機材があっても扱う人間がいないとって話だよな。それはやっぱり誰でもすぐにできるわけではないわな。
城内:そういう意味でも今回、大阪芸術大学やヴィジュアル・アーツっていう存在は大きかったですね。
富岡:大阪電気通信大学もそうやね。機材があるところが監督を直接バックアップしてくれなかったらできなかったところって多々あった。だからそういう場所にもしたいのよね。それは前のシネトライブからそうだったんだけども、学校の中だけでやっていたのではやっぱり刺激にならないところだけど。学校のなかでやることやっちゃったって人間がでてきてたまれる場所にしたかったんだよな。重複になるけど、プロと自主制作の間の幅が広すぎるからその間にワン・ステップつくりましょうっていうことだよ。
城内:僕も大芸の生徒さんたちとヴィジュアル・アーツの生徒さんたちが同じ現場にいてやってるっていうのはひとつ感動的なことでしたね、いままであんまり見たことなかったんで。まぁ問題点っていってるのにこれもよかった点ですが(笑)。だから今、関西の自主映画がおもしろくなってきてるなっていう実感はそこにもひとつあって、技術面っていうことであれば大芸とヴィジュアル・アーツの子たちが中心になっているんだけども、現場をまわしているのは僕らみたいなそういう学校からしたらまったくのアウト・サイダーであったり、役者さんにしてもタレント事務所から来てもらったりあるいは劇団から来てもらったりっていう風に、ほんと雑多な人間が入り乱れて作ってるっていう状況だと思うんですよ。その状況がこのCO2でさらに促進されたなっていう感はありますね。
あと話をもどすことになるかもしれないけど、問題点といえばやっぱりお金というか…。今回撮影に協力してもらったスタッフにはほとんどボランティアというかたちでかかわってもらってるんですが、技術を持っている人たちには多少なりともギャランティーを支払っていくっていうぐらいの予算がないと継続はできないって感じてますね。もちろん、インターンで登録した人が初めて映画の現場を経験する場所としての機能もなくしたくはないんですが、でも映画のクオリティーを下げずにやるにはすでに出来るってわかってる人に入ってもらわないと出来ないわけで。そういう人にCO2に参加してもらうためには経済活動として成立させないと。そこが一番大変だし、重要なことかもしれない。今回ぐらいの規模の撮影だと普通予算は一本あたり250〜500万ぐらい必要になりますね。それが一番大きなプロデューサーの仕事ですが…。
|
|
城内:じゃ、最後に今後の展開についてですが。
基本的にCO2というのはいい作品をとっていくというところに間違いはないんですが、じゃ、そのいい作品という基準はどこかという話にもなりますよね。単にCO2で制作した作品が商品になればいいというだけじゃ言い切れてないし。
CO2に限ってのことではないしむしろエンカウンターの仕事でもあるんですが、映画を見る観客層を育てていかなければならないっていう風に考えてはいるんですが。
そこでもうひとつここでプロデューサーのお二人に質問なんですが、「おもしろい」作品と「ヒットする」作品との距離感というか、そのふたつの関係性ってどういう風に考えてますか?
富岡:それは僕は一致してるよ。僕がおもしろいとおもうからお前らも面白いと思うやろっていう根拠なき自信は長年映画を見てきた中であるよ(笑)
菊池:それは僕も一緒やね。
城内:(笑)確かにそれはプロデューサーには必要な考え方かもしれない。でも極端な話かもしれないけど、最近あたってる作品がおもしろいかといわれれば、そういう風には思えない。で同じ質問をちょっと前に黒沢(清)さんにしたときに「自分がおもしろいと思う作品と当たる作品はまったく逆だ」って言い切ってはって。別の人にしたら「あたってるものがおもしろいものっていう風に考えてる」って言われて。
富岡:それはプロデューサーとして問題があるよ。
城内:だからプロデューサーにこの問っていまあまりされていなかったんじゃないかと思うんですよ。だからこんなにぶれてるんじゃないかと思うんですけど。僕個人的にはおもしろいと思ってるものがあたってないし、あたってるもののほとんどがおもしろいと思わないのが正直な現状ですけど。
富岡:それは何十年前からそうだよ。それはもちろん宣伝のこともあるんでなんとも言えないんなけど。あえて言い切ってしまえば、いいプロデューサーがいないっていう。プロデューサーが監督に負けちゃう。プロデューサーは監督より映画のこと知っとかなきゃいけないし、監督を説得するだけの力がないといけないから。作家はやりたいことやりたいってのは本当だろうし。そのバランスをどこに持ってくるってのが大事になってくるよ。もちろん現状は昔みたいにスターはいないわけだから。この人が出てたら客がはいるって人はいないし。いたら逆に教えて欲しいよね。
例えば織田裕二を出せばフジテレビとタイアップしてばんばん宣伝やるから入るわけで、映画がおもしろいから入るわけではないし、織田裕二が出てるから入るわけでもないよね。宣伝ってことになると単純にお金ってことになるから、そこまでお金をかけないで小さな規模でペイできる形を見出せないかというところやろな。僕としてはパウロ・ブランコとロジャー・コーマンの融合を計りたいよね、そのためには海外の映画祭がある程度バックアップしてくれれば、可能性もでてくると思うねんけど。それも情けないちゃー情けないけど。
城内:そうですね
富岡:やっぱり『ばかのハコ船』が完成したとき関西のマスコミ向けに試写をしたんだけどもほとんどきません、ほんの数人。大阪人が大阪人を一番差別してるといえばそういう感じになるよね。それで外国の映画祭に出て話題になって、日本の評論家も見ざるを得ない状況になって、で東京で公開されてもう一回大阪で試写をすると、今度は満員。「お前ら、自分で自分の見方を決められないのか」って。これは批評の問題でもあるし、メディアの問題でもある。
外国の場合、記名記事でおもしろいものはおもしろいって書くんだけど、日本はまだそうはないってないよね。悲しいかなこれは日本だけなんだよ。日本人は、っていうとあれだけどいまだに権威主義が残ってて。これは叩き潰さないとどうしようもないっていうのはありますわな。
城内:じゃ先に海外の資本が入ってくるっていう可能性はないんですかね。
富岡:それも考えられるよ。実際そういう話はあるしね。まだ公にはできないけど。まぁそういう意味ではやっぱり海外のほうが敏感やし。
それは何年も前からそうでしょ。どういう状況になっても、おもしろいと思える作品を発信していくことが僕らの役目やと思ってるからね。
城内:なかなか時間はかかるかもしれませんが、(作品のクオリティーに関して)安心して観客の方に映画を見てもらえる状況を作っていくのもプロデューサーの仕事のひとつではあると思いますね。最後はCO2のことからかなり話がずれてしまいましたが、
自主映画ではなかなかスポットのあたらないプロデューサーからの視点がいろいろ見れてよかったです。
とにかく来年のCO2とかにも注目してもらってってとこでしょうか。 本当に今日はありがとうございました。
< INFORMATION>
シネアスト・オーガニゼーション・大阪エキシビジョン
http://www.co2ex.org/
|