その佐藤氏は現在、E・サイードの足跡を追いながら、過酷な情勢が膠着し、まさしく全世界の混沌を圧縮・噴出させたような状態が続く中東世界を見つめる新作『OUT
OF PLACE(仮)』を制作中であり、そんなわけで今年は「中東特集」であるということだ。
戦火のたえない「彼の地」とはまったく切り離されたこの京都という場所で、我々にできることとは「彼の地」の映像を通して、さまざまなかたちで出現するだろう「彼の地」(へ)の思いをしかと見届けることであろう。
それから、新作『OUT OF PLACE(仮)』は、おそらく佐藤氏自身にとっての作家としての大きな転機となるものになると同時に、この混沌たる世界への共時的な、さらには通時的な批判が織り込まれたものになるのではないかと、勝手に考えている。そうなるとスゴイな、といういち観客としての無責任な期待ですが。
【佐藤真(さとう・まこと)】
ドキュメンタリー映画監督。東大在学中に水俣病の運動と出会い、3年の共同生活を経て『阿賀に生きる』でデビュー。監督作に『まひるのほし』『SELF
AND OTHERS』『花子』『阿賀の記憶』など。『ドキュメンタリー映画の地平』などの著書も多い。現在エドワード・サイードの記憶と痕跡を追う『OUT
OF PLACE』(仮題)を製作中。京都造形芸術大学映像・舞台芸術学科教授。