『松ヶ根乱射事件』より『ユメ十夜』の方が先に公開されるみたいですね。そっちの方も大スター(藤岡弘、)との熾烈なせめぎ合いが観られるとのことで。
山下:せめぎ合ってますよ(笑)
あと、子供も出てくるということで…
山下:あのね、『ユメ十夜』は『よっちゃん』(※)に近い。
−あ、それを期待してました。
山下:『よっちゃん』のテーマは間違ってなかったと今でも思ってます(笑)

※『よっちゃん』(2002年/DV/15分/製作:PLANET STUDYO+1)……
大阪市守口市民の厚いバックアップのもと2002年夏に制作された山下監督の短編。とある町で、ぼろ屋に孤独に住み、周囲の住民から“よっちゃん”と呼ばれる謎の中年男の正体を2人の少年(守口市民の素人小学生を起用)が暴こうとする。完成後、一部で上映された以外ほとんど人目に触れていない。その存在自体がほとんど“都市伝説”と化した作品で、「失敗作。即封印すべき」「山下監督の新たな可能性がここにある」など、観た者の中では意見がさまざまに分かれる問題作と言える。山下監督自身、もう一度挑戦したい題材だと度々語っている。



さて、本題に入ります。『松ヶ根乱射事件』を先日拝見しました。で、一言で言うと「やっちゃいましたね」っていう。
山下:「やっちゃった」感がありましたか…
狙って「やっちゃってる」ってことなんですが、山下さんや脚本の向井(康介)さんにとっては狙い通りの映画になってるんだろうと思いました。 撮影からどのぐらい経ってますか?
山下:今年(2006年)の1月をまるまる使って撮影したから、ちょうど一年。
−映画自体は冷静に観ることができますか?
山下:完成してすぐに2回ぐらいは観てるんだけど、それからずっと観てないんで、もう一回ちゃんと観たいなぁとは思ってるんですけどね。

−じゃぁ東京国際映画祭のコンペ部門での上映のときも観てないんですね。

山下:あの時は舞台挨拶と会見だけ出て、(『天然コケッコー』の)撮影の途中でトンボ帰りだったんで、全然観れなくて。
−今、この映画をみんなどう観るんだろうというのが一番気になっているところなんですよ。山下さん自身も含めて。僕は試写で観たんですが、みんなリアクションがなくて(笑)
山下:作った側としてはそれが狙いだったんだけど…。でもまたそれはそれで不安になる(笑)ノリとしては ほんと『ファーゴ』みたいな感じで、最初にああいうこと(映画の冒頭に出るテロップ)を書きつつ、実は全部作り話だった!みたいにしたかったんです。見世物小屋的な、映画の持つハッタリを出したいな、と思ってやったんだけどね。
−最初の入り方は完全に『ファーゴ』を想像して下さいっていう入り方ですよね。雪の中に赤い服着た人が倒れてるってだけなんですけど。で、その後にそれが続かない。
山下:最初だけやっといて、そこから後は違いますよっていう。
−『ファーゴ』はやっぱり映画としてドンドンとんでもないことになっていって、グイグイ観る者を引っ張っていきますけど、この映画は全然そうならない。血が出ないですよね。何か起こりそうな映画なのに、ついに何も起こらない。
山下:うん。
−このあたり、『リンダ リンダ リンダ』から引き継いでいていながら、より確信的になっているところだと思うんですが。
山下:『松ヶ根乱射事件』のプロデューサーの山上(徹二郎)さんの考えに、「『リンダ』は音楽がちゃんとオチとしてあって、それできちんとオチてるから、それはそれで気持ちよくなれる。そういうのじゃないことを山下にやらせたいんだ」、というのがまずあったんだよね。山上さんは、僕の映画の中では『ばかのハコ船』をすごく買ってくれてて、『リンダ〜』の後にこの話をいただいたんです。それが2年前ぐらい。芥川龍之介の『偸盗(ちゅうとう)』を下敷きにして、現代の話に置き換えた佐藤(久美子)さんの脚本を渡されて、『偸盗(ちゅうとう)』にはこだわらなくていいし、(向井と一緒に)自由にやってみて、と言われたのがスタートだったと思う。
 

僕も観ているうち、最初は『ばかのハコ船』だな、と思いました。でも、観終わったあとに『腐る女』だったんじゃないかって。そういう意識はなかったですか?
山下:うーん、そうだなぁ…『腐る女』っていうのは意識してなかったけど…。『松ヶ根』に関しては向井がすごく生き生きとしちゃってね。
あ、それはそうでしたね!
山下:ほんとに水を得た魚のように、どんどん変な方向に走っていっちゃって。僕はそれを託されたって感じ。
−僕も、向井さんにこういうインタビューでしゃべりたいんですよね。『ばかのハコ船』のときから思ってるんですけど。
山下:向井がどういうことを言うのか気になるよね…

−(笑)。『腐る女』だっていうのは、CINEMA ENCOUNTER SPACEで『台風クラブ』の上映を企画した時、04年夏に山下さんにしたインタビューで、僕、「次はゾンビ映画でお願いします」って言ったんですよ。で、これ(『松ヶ根〜』)はゾンビ映画ですよね。

山下:ああ〜、なるほど。最初から死んでると。
−生きながらにして死んでいると。人里離れた村があって、そこから誰も抜けられない。その中に、『ばかのハコ船』のカップルみたいなどうしようもなさそうなやつら(木村祐一×川越美和)が外の世界からやってくるわけですけども、最後に結局、村の中に取り込まれちゃう。で、さっきの「何も起こらない」っていうのは、もうすでにみんな死んでるからで、だから「血も出ない」っていう。
山下:なるほど、新しい命が生まれても、これもゾンビだと。
−だって、誰の子供だか結局分からなくなるじゃないですか。
山下:見せ方として、さっきも言った「見世物小屋」的なテンションで、お客を惑わせたいとか引かせたいというイタズラ心がすごくあったというか、そういう気持ちで向井とキャッキャ言いながら書いたんだけどね。確かに言われてみれば、映画のスタンスとしては『腐る女』に似てるのかな。 たぶん、『リンダ リンダ リンダ』がああいうかたちで世間に受け入れられてしまったことで、自分もいろいろ感じたところもあって、あれが「ジェダイ・フォース」だとしたら、世の中には「ダークフォース」もあるだろう、次はそういう暗黒面を出したいっていう思いが僕や向井にもあった。そういう悪意って意味では、『腐る女』に近いかな。 だから、笑ってもほしいんだけど、映画の持つハッタリ感というか、見世物的なものを久々にやりたかったということかな。
−だから、そういう悪意みたいなものをかぶせられて、お客さんがどういう反応をするのかっていうのがとても楽しみですよ。
山下:女性は来るのかな、この映画って?
−いや〜厳しいかも(笑)
山下:これで1回引くんだろうなぁ…。でも、唯一の救いは、これが「PG-12」になったってことで、最低でも「R-15」だと思ってたから。間違って観た中学生がこれでちょっとしたトラウマになってくれれば(笑)。
−12才以上なら誰でも堂々と観に行けるわけですね。
山下:でも、おかしくない?この映画が「PG-12」で、『ばかのハコ船』が「R-18」なんだよね。
−あ、そうでしたっけ?なんだろうな、それは?
山下:昔、西川美和さん(『ゆれる』監督)が『ばかのハコ船』を観た時に、(久子役の)小寺(智子)さんや(マドカ役の)細江(祐子)さんが脱ぐと、なんかすごく生々しく感じたって言ってたんだけど、多分、そういうことなのかなって最近思った。いかにもな杉本彩とかが脱ぐのと、ああいう、普通に見える人が脱ぐのと、わけが違うんだろうなぁと。
−ええっと、今回おっぱいってありましたっけ?
山下:最初の検死の…
−ああ、そうか!検死台の全裸!あそこしか出てこないですね。
山下:あと、春子(安藤玉恵)の「ヘア」がバス停で。
−おじいちゃんに見せてたとこですね。あそこのシーンはすごく暗くって、かすかに見えるか見えないか。
山下:あと、はっきりやっちゃってるのが、光太郎と◯◯(※あえて伏せます・CES)がセックスしてるところで、おしりがでっかく映ってる。あれでR-15はいくかなーと思ってたんだけど。
−逆光でしたね、あれは。でも思い返してみると、どーんとあからさまに出してるか、ギリギリ見えるか見えないか、その二つを同時にやってるかっていう感じですよね。
山下:そうだね。まぁでも、意図的に淡々と撮ってるけど、あからさまにやってるところはやってるんだけど。意外や意外、立派に一般映画として公開されることになったという。
−分からないですね、映倫(笑)
山下:難しいね(笑)。どうなってんだろう、ほんと。
  

映画の内容を話していくとこれから観る人にもったいないので、観てのお楽しみということで、キャストについて聞きたいと思います。とにかく芸達者な方々が集まった感じで。豪華ですね。
山下:完ぺきなキャスティング(笑)。
このキャスティングはどうやって?
山下:もう、全員でやったって感じ。山上さん、向井、脚本の佐藤さんも交えて、ギリギリまでやってた。
−その豪華なキャスティングの中で、宇田鉄平さんが出てる(笑)。
山下:宇田鉄平さんだけが、僕から提案して無条件で出してもらった唯一のキャラです。オーディションなしで(笑)。

−ほんとうに『どんてん生活』からまったく変わらない姿で。

山下:そう、ぜんぜん変わってなくて。赤犬のライブとかでは見てるんだけど、映画ではほんと久々で、これがまた僕としてはよかったです。「あ、35ミリでも通用するんだ」って。ちゃんと35ミリの芝居になってた。
−『どんてん生活』の時と同じく、だまされてることに気づかない(笑)。
山下:気づかない(笑)。すばらしい!
−まぁ、すべての人に触れていくととても時間が足りないぐらいなんですが、その中でもやっぱり三浦友和。このキャスティングには特別な思いがありますよね。
山下:すごい迫力のある人で、独特のオーラがあるというか。一見軽そうなんだけど、重い、というか。でも懐の深い人。最初に手応えを感じたのは、リハーサルの時。お見合いのシーンで、いいかげんで調子のいい親父が相手方の娘と父親にひたすらしゃべってひんしゅくを買うっていうシーンで、三浦さんが自分の台詞読みながら吹いちゃって、「よくこんな面白いの書くね!」って。その時に、ああ、もう大丈夫だと。それからはもう、こっちからも意見が言いやすくなったね。僕が作ってるような、ああいうユルい物語が好きな、ある種、どこか生々しいリアリティが好きな人なんだよね。今回は、自分の映画には珍しく決め台詞があって、それが三浦さんの言う一言。
−お見合いの直後に光太郎(新井浩文)と家の裏で口論するところ。
山下:そう。あそこはいわゆる映画的な決め台詞として、自分たちの映画としては多分はじめてやったことなんだけど、物語をがらっと変える一言っていう意図で、“映画の中で”説得力のある人に言ってもらわないと成立しないだろうなと思っていたんだよね。で、三浦さんが実際そのシーンをやっているのを見た時は、はじめてカメラの中の光景にシビれた瞬間だった。「あ、カッコいい!」と思っちゃった。
−あそこはアップでしたね。
山下:うん、あそこはアップって決めてた。そこは狙ってよかったと思ってます。
   

『ばかのハコ船』とやっぱり違うなって思ったのは、この映画ってブレてないんですよ。『ばかのハコ船』とかは、山下さんが画面の後ろにいるっていうのがすごくよく分かって、山下さんやスタッフみんなの意図や「こうしたい」っていう思いと、スクリーンに映ってる、実際出来上がってる画面とがすごいブレてて、そういう意味でがちゃがちゃしてるんだけど、むしろ、そこがスリリングなんですよね、観る我々の側にしても。そういう面白さがあったんですよ。で、そういう面白さっていうのを意識的にやったのが『その男、狂棒に突き』だったと思うんですけど。
山下:ああ、自分がカメラ持ってしゃべってるしね。
『リンダ〜』(たぶん『くりいむレモン』もそうなんですけど)とかは、自分の思い入れとか欲求みたいなものっていうのを「オフ」にして、映画をいかに成立させるか、保たせるか、というバランスを徹底していると思うんですよ。
山下:『不詳の人』、『道』とか、『その男、狂棒に突き』の実録シリーズの路線を続けていて、いわゆる大きな「映画の企画」とそういうものとを交互にやることで、自分の中で調整してたっていうのはあるよね。でも、去年『道』をやって、「こういうのは、もういいや」っていう気になっちゃって。その直後に『松ヶ根〜』だったから、異様に映画を意識したところはあったな。キャストがとにかくいろんなすごい人たち、というのもあって、気はすごく張ってたと思う。
−だから、一番この映画ってブレてなくって、山下作品には珍しく確信すら見えるんですよね。
山下:ああ、うん、それは確かに言われた。たとえば今回はキャメラマンが蔦井(孝洋)さん(『ジョゼと虎と魚たち』など)だったりして、それが近藤(龍人)くん(『どんてん生活』から『くりいむレモン』までの山下長編のキャメラを担当。『天然コケッコー』で35ミリデビュー)だったりすると、付き合いが長いから知ってる部分も多いんだけど、逆に意識しちゃう部分も多いし、見えないぶつかり合いがある中でやるから、すごくブレるんだよね、近藤くんとやると。でもそれで逆にいい画が撮れたり、意外な面白さにつながったりだとかがあるんだよね。蔦井さんはキャリアがすごくある人だし、今までとちょっと違う感じのキャメラマンだった。「とにかく監督が思うように撮ろうよ」という人で、蔦井さんと話しながらキャメラ位置を決めていくと、ある意味でカット割りとか画面に自分のクセが出てるんじゃないかって気がする。だから編集作業も早かったし、編集の段階ではじめて何かを発見するとかそういうことはなかった映画ではあるね。

−自分ではどういうところにそのクセが出てると思います?

山下:無理矢理ワンカットにおさめるところ(笑)。食卓でみんながテレビ見てて、子供が全裸で走ってきて…とかそういうの。
−(笑)。
山下:『リンダ〜』のあとに『松ヶ根』を見た人から、『どんてん生活』『ばかのハコ船』の頃に戻ったんじゃないかって言われたのは、中身的にはぜんぜんこの映画は違うんだけど、そういうところを言われてるのかなぁ、と。だから、『どんてん生活』の頃がいちばん「自分」なんですよ。カット割りとかキャメラを置く位置とかって。そういう意味では『どんてん生活』に一番近いのかもしれないなって思う。
−この『松ヶ根乱射事件』というタイトルの、「乱射」っていうのが、まぁ実際に映画の中では「発砲」されますけど、いろんなことにかけてるんじゃないかって質問が東京国際映画祭の記者会見の時にあったと聞いたんですけど。かけてたんですか?
山下:いや、ぜんぜん(笑)。ただ、このタイトル自体は向井のアイデアで、最初は「“帝銀事件”とか“下山事件”とかって響きがカッコいいよね、そういうタイトルにしよう」って言い出して、で“松ヶ根事件”にしたんだけど、「なんか、パンチ弱いな」と。それで、最後は発砲することは決めてたんで、「じゃぁ“乱射”って入れよう」って僕が言って今のタイトルになった。ほんと、そのノリです。
−ええっとね、僕、向井さんだったらたぶんこれだろうって思ってたんですけど、田中登の『人妻集団暴行致死事件』。
山下:ああ、そうかもしんない(笑)。
−室田日出男と古尾谷雅人が出てるんですけど、これ、いい映画なんですよ。鶏卵業をしてる室田のところに知恵おくれの情婦が住みついて、卵泥棒をしにきた古尾谷含む三人の若者が捕まるんですけど、その後、なぜか室田と仲良くなるんですよね。でも、若くて辛抱たまらんもんだから、酔っぱらって室田の情婦を三人でまわしちゃうっていう。最後は室田が屍姦して自分も死ぬっていう不人情きわまりない救いのない映画なんですけど。
山下:あいつ(向井)ね、言わないんだけどなんかパクってる場合が多いんだよね。『ばかのハコ船』の時も、「しかくなフネ」かなんかそんなタイトルの小説が面白くってそれを使ったって後で聞いたし。
−そういうの、山下さんが知らないってまずいじゃないですか(笑)。
山下:完成して、後々なんかの拍子に聞いたりしてね。あの人、言わないからさ(笑)。
   

でも、この映画ってすごく話すの難しいですよ。観てない人に対してどこまで言っちゃっていいのかっていうのもありますし、どこまで出すべきなのかというのが。だから、ここに来る前にちょっとどうしようかなとは思ってたんですけど、例えばこのインタビュー丸々仕組んじゃうとかね。「現代に生きるすべての人に突きつけられた大問題作だ!」とか「考えうる最も悲惨な状況を遥かにしのぐ凄惨さ!」「そして壮大なヒューマン大河ドラマである!」とか。山下さんが「私が描いたのは真実そのままである。人間とはこのような悲しくも滑稽な生き物なのだ」とかどこかの巨匠みたいに答えるっていう。
山下:映画の方も最初はそういう悪ノリで行こうと思ってた。でも、撮影前はビビってて。表向きは笑える部分があるんだけど、よくよく覗くと重くてイヤな話だから。誰も死なないんだけど、逆に新しい命が生まれること自体が悲劇だったり。今まで自分はやってなかったことをやってるなと感じた時に、「これヤバいかも」っていう感覚はあったかな。でも、それをどうにかクリアしようと思って、なんか確信を持ったというか…というよりも、一歩引いたっていう感じかもしれない。キャラクターに近づくと呑まれちゃうような気がして、距離を保たないと、ドロドロしたモノに自分がやられちゃうような気がして…。

この映画って、自分でいうのもなんだけど、脚本が面白いんですよ。で、今回は僕が監督をしたんだけど、これをまた10年、20年、30年後に誰かがその時の状況に合わせてつくってみてほしいと思うんだよね。僕とは違う、すごくシリアスなものにもなるかもしれないし。親子、双子、新しい命、外から来た者…いろんな要素がつまってるものだから、何十年後かにリメイクとかがあって、僕が車椅子で現場に来て、市川崑監督ばりに握手してるっていう(笑)。そういうふうな映画になってくれたらな、と思う。

今回は、佐藤さんや向井が書いた脚本を僕が監督した“山下ヴァージョン”であるっていう感じで、この脚本はいろんな機会に使っていってほしい。
「かつての私の作品とまったく違うものになっていてびっくりです」とか言って。
山下:「そうか…火星の開拓の話にしたんだねぇ…」とか(笑)。
−(笑)それにしても、すごく体力の要る映画だったと思います。
山下:疲れた?

−みんな待ち構えて観てるって感じだと思いますよ。

山下:ああ、そうかも知れない。引っ張ってってくれるって感じじゃないよね。
−「今か?ここからか?」って。ちょっとずつ前のめりになって…また座り直して…みたいな。
山下:あ、なるほどね…ある意味、図々しい映画だよね。
−だから、上映中の空気はどこか見守ってるような感じになるんじゃないかと。
山下:あ、まさに見世物小屋だよね。客は待ってるしかない(笑)。「次、何出てくんの?」って。で、意外とショボイ奴が出てきて…。
−「次は大丈夫だろう、次こそちゃんと来るだろう…」
山下:「次こそ…あれ?これヘビ女?ぜんぜん違う…」みたいな。
僕の行った見世物小屋でも、最初のつかみはけっこうすごい芸の人が出てくるんだけど、あとは段々こう(↓)なってきて。見世物小屋を出た後、すごく複雑な気分になって、怒りじゃないけど、やるせない脱力感でいっぱいになる、それに近い感じかもしれないね。
     

最後に何か、ハッタリの効いたことを出せればいいんですけど…まぁでも、こういう話をしていてなんですけど、できるだけカラの状態で観るのがいちばんだと思うんですよね。
山下:そうそう、タイトルだけで入ってくれれば。あ、それと、この映画って、スチールだけだとよくないんですよ。ていうのは、スチールをみてザワザワするあやしい感じがないんだよね。まぁこれもハッタリなんだけど。だから、「どれだけ見せないか」でいった方が興味引くんじゃないかと思って。
でも、いっぱい人が出てるから、一人一人の写真をちっちゃく『犬神家の一族』みたいに配置して、「誰が犯人だ!?」っていう感じにはできるんじゃないですか?
山下:おどろおどろしいタイトルがどかっとあって、顔写真がポンポンって並んでて、真ん中に新井浩文くんがぽつんと立ってる、みたいなのでいいんじゃないかと僕も思うんですけどね(笑)。それか『グーニーズ』とか『燃えよドラゴン』とか、油絵で描いたみたいなやつ。最近だと『ゴジラ・ファイナルウォーズ』(笑)。
−パンフに載る山下さんのスチルも充分ハッタリ効いてますよ。神妙な顔でデカい望遠鏡みたいなの持って『デルス・ウザーラ』でも撮ってんのかって思いますよ。
山下:あれ、全然現場でもなんでもなくて、ポーズとらされてるんだけどね。
     

2006年12月23日 於:PLANET STUDYO PLUS ONE
インタビュー・構成:田中誠一(CINEMA ENCOUNTER SPACE)
協力:ビターズ・エンド
プラネット+1


『松ヶ根乱射事件』…http://www.matsugane.jp/